一般社団法人Nippon Diner協会 理事長 齋藤隆

 伝統と革新に挑戦する食品メーカーを探索してはや半年。訪問取材したり、ネットで検索したり、電話やファックス、あるいはメールでやり取りしたりする毎日です。それぞれの製造元から編集協力を得て、それぞれのページを制作しております。
 商品発掘の旅は始まったばかりですが、今、私に、一つの思いが生まれています。
 「日本の小さな食品メーカーは、日本の食文化を蘇らせる力を持っている」
 大手食品メーカーとは違った力を、セレクト食品の対象になった小さな食品メーカーに感じます。ただし、そのためには消費者が探究心のある小さな食品メーカーを正しく知り、大切にする気持ちを持たなければなりません。Nippon Diner®セレクト食品発掘の大きな意味がこの点にあります。

→「Nippon Diner®セレクト商品リスト」へ


「小さな生産者から伝統と革新の技や正しい食文化を再発見する時代です」

 最初にそれを強く感じたのは秋田の新政6号(吟醸酒を誕生させた酵母6号)との出会いでした。日本酒造りのために新政酒造の当主達が世代を超えて戦っている姿が見て取れます。新政6号とは違うタイプですが、日本酒発祥の地である奈良盆地の南端に位置する御所(おぜ)の油長酒造の風の森シリーズに、新しい日本酒の世界を創造する力を感じました。この2つの酒蔵の現当主は30歳〜40歳と若いのです。日本酒は大きく変わるでしょう。
 新潟の吉兆楽は伝統技術(氷室)と革新技術(氷温技術)を融合させ、新潟県魚沼産コシヒカリに、吉兆楽という自社のブランド価値をつけています。「美味しいお米をもっと美味しく、そして1年中新米の美味しさで届ける」が彼らのブランド価値です。
 秋田の安保金太郎商店は、日本中がコシヒカリやササニシキなど高級銘柄ばかりに傾倒している現代人に「日本にはこんな米だってあるんだぞ」いう挑戦状を「鹿角の萌みのり」で突きつけ、若い世代に人気を集めています。「鹿角の萌みのり」のパッケージ(茶筒)とキャラクターのデザインが、これまでの米袋の常識を破って面白い。
 佐賀の「香味干し」は有明海の優れた海苔に伝統的採取法を取り入れ、焙煎という新しい技術を加え、これまでの板海苔とは違った新しい海苔のカタチを誕生させました。誕生の裏には、生産者では考えられない料理人の発想があります。
 愛知県碧南の日東醸造は、三河地域の白醤油文化を守るだけでなく、現代に蘇らせる挑戦をしています。まず究極の白醤油を作るため原点に戻り「三河しろたまり」を開発しました。さらにミネラル豊富な美味しい天然水を求め、とうとう愛知の山間の廃校小学校に仕込み蔵をつくりました。
 熊本の日本牛乳野菜は、野菜や穀物をナノ(1ミリの100万分の1)レベルの超微粒子化技術を独自開発し、玄米を籾殻から丸ごとジュースにする商品を開発しました。皮から種まで全てジュースにする技術です。例えば、パイナップルもあの硬い皮ごとジュースにしてしまいます。「一物全体」が当社のモットーです。なかなか理解されにくい技術ですが、この新技術は世界中の食品企業を魅了するでしょう。
 福岡の茅乃舎のだしは、小さな地方の企業がイタリアのスローフード運動に感銘し、古い田舎の風景を作るために、萱葺き屋根の自然食レストランを開いたのが物語の始まりです。その後次々事業をヒットさせ、今や年間売上が140億円を超える大企業になりました。当初の精神を忘れず、視野を世界に置き、新たな事業を考えているようです。
 Nippon Diner®セレクト食品は大手食品メーカーの事例も取り上げています。例えば大塚食品のボンカレーです。「なんでセレクト食品に?」と思われる読者の方も多いでしょう。ボンカレーは、今では誰もが知っているレトルト食品を世界に先駆けて1968(昭和43)年に開発・発売したパイオニアです。この事実は案外に知られていません。大塚食品は新しい食品カテゴリーという伝統を創ったのです。そして大塚食品はその伝統に甘んずることなく、新たな革新を続けています。そんな様を紹介します。
 地方の小さな食品メーカーは、大手食品メーカーとは違った企業姿勢を持っています。確信を持った商品を、消費者に理解してもらうため、使ってもらうための努力を、組織の世代を超えて続けています。

→「Nippon Diner®セレクト商品リスト」へ


 この紹介シリーズは伝統と革新に挑戦している地方の小さな食品メーカーの活躍する姿をわかりやすく解説したものです。読者は食品の生産にかかわる人々や、食品を流通・販売している人々を想定しています。さらに一般の消費者にも是非読んでもらいたいです。なぜ消費者が読者かというと、先ほど述べたとおり「消費者は小さな生産者を正しく知り、大切にする使命がある」からです。この考えは、イタリアで始まり、世界に流布しているスローフード運動に通じます。スローフード運動の重要な要素は「伝統料理の伝承」「小さな生産者を正しく理解し大切にする」「子供たちの教育を含め、食を科学する」の3つです。

 皆様のご意見、ご感想を元に、すばらしい日本の食品の発掘に磨きをかけ、来春にガイドブックNippon Diner®セレクト商品を出版する予定です。因みにガイドブックの目指す目標は以下の通りです。

「日本の食品のあるべき原点が見える」

 Nippon Diner®セレクト商品は、料理人、料理研究家、食品技術士、マーケティング専門家など、約10名からなる評価委員会による選考を踏まえて決めています。評価項目は、@試食・試飲評価、A「伝統と革新」に挑戦する各企業の物語、大きく分けてこの2項目からなっております。

→「Nippon Diner®セレクト商品リスト」へ


2014年10月8日