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ビンテージ・ワインのような醤油を作りたい 金両丸大豆醤油

商品の素顔

  商品名金両 特選丸大豆醤油
  カテゴリーしょうゆ
  製造者金両株式会社(本社:香川県小豆島町)
  原材料大豆(遺伝子組換えでない 福岡産ふくゆたか)、小麦(香川産 さぬきの夢)、食塩(瀬戸内海産)
  規格本醸造 こいくちしょうゆ
  価格1,100円(720ml)
   

1 創始者は藤井家11代目、その2代目は懐の深いアイディアマン
  明治13年(1880年)、廻船問屋を営んでいた藤井家当主11代目(金両としては初代)が醤油業を始めました。以来134年間、伝統的な製法を守った醤油づくりを続けています。右は、2代目の時に大阪難波に開いた直売所の写真です。他地域に直売所を開くという発想は今でこそ珍しい話ではないですが、この時代では非常に画期的だったと想像できます。
   この写真から、2代目がどのような人物だったのかが、ぼんやりと想像できます。まず店の前に積まれた醤油樽です。写真奥の物は金両醤油(当時の「ふじ庄醤油」)のロゴが付けられていますが、手前の物は同じく小豆島のマルキン醤油のものです。直売所で他メーカーの商品も扱うとは、2代目の懐の深さを感じます。また、写真奥ののぼりをよく見ると、こう書かれています。
 「お料理には ぜひふじ庄のお醤油で ネーェー 旦那(あなた)」
 このような洒落たキャッチコピーを考え掲げるとは、かなりのアイディアマンでありユニークな人物だったに違いありません。このアイディア精神が現在の藤井寿美子社長に受け継がれています。

2 子供の頃の夢は「醤油屋」
 現在の社長、藤井寿美子氏は金両醤油5代目。金両に入社してから20年が経ちますが、「まだまだ修業中です」と謙虚に語ってくれました。小さい頃から「将来の夢は、お醤油屋になること!」と作文に書いていたそうで、根っからの醤油少女(醤女?)だったそうです。神戸の大学を卒業し、3年間のOL生活を経て、ごく自然に金両醤油に入社し、幼い頃からの夢を叶え、2012年に金両醤油社長に就任しました。
 そんな寿美子社長を、時には影で支えたり、時には強く後押しするのが、金両醤油の専務であり寿美子社長の夫でもある智幸氏です。現在は、二人三脚で金両醤油をより良い醤油屋にすべく、年中無休で日々奮闘しています。

3 全て国産原料のみ使用
 金両は国産原料にこだわっています。
 大豆は福岡産のふくゆたか、小麦は香川産のさぬきの夢、食塩は瀬戸内海産です。ふくゆたかは豆腐によく使われており、高タンパクでうまみ成分が多いのが特徴です。九州地方で多く栽培されており、収穫量も多く仕込みやすくなっております。
 日本にフランスやイタリアのような地理的表示が義務付けられれば、真っ先に候補にあがるのが金両の醤油でしょう。

4 蔵と木桶の天然醸蔵×天然酵母菌×数年の熟成醸造=美味しさの方程式
 金両醤油の蔵は、有形文化財に指定されています。その蔵の中に、創業当時から使い続けている杉桶が8本あります。この杉桶に、大豆、小麦、食塩水、醤油麹を入れ、2〜3年かけて天然熟成させます。通常の醤油は数ヶ月でできます。
 杉桶で熟成させて出来たもろみは、風呂敷に包んで何重にも重ね、圧搾機でじっくり時間をかけて絞ります。絞った生醤油は、85度で火入し、ようやく「醤油」になります。このように、金両の醤油は、長い年月を経て、手間ひまかけられて商品となっているのです。この工程を聞くと、頂く方も最後の1滴まで大事にしたくなるはずです。
 蔵の梁には酵母菌がびっしり付着していますが、この酵母菌は、134年間の金両醤油の歴史が作り上げたもので、金両醤油の味の決め手となっています。
 金両の味を守るには、昔ながらの製法を守ることも重要ですが、何よりもこの酵母菌が棲みついた蔵を守ることが最も重要です。残念ながら金両の酵母菌の正体はまだ明らかになっていません。
 「蔵と木桶による天然醸蔵×蔵の天然酵母菌×数年かけた熟成醸造」が金両の美味しさを際立たせています。
 大手メーカーの醤油との品質の大きな違いは味の「まろ味と旨み」です。川の石が長年経つと丸くなってくるのと同じで、長年杉の桶でねかせることにより、カドがとれたまろやかな味、また大豆や小麦の旨味がいっぱい詰まった醤油に仕上がります。
 店にきてくださったお客様がこう言ったそうです。
 「スーパーの醤油は、魚を煮たりしても味がでないけど、金両さんを使うと醤油の旨味がいっぱい出ているから、ほんの少し加えるだけで美味しく仕上がるわ」

5 小さな醤油屋しかできない天然木桶仕込みの熟成醤油
 全国の醤油生産量の99パーセントが、温度調節された工場で3〜4ヶ月で作られています。杉桶で、しかも天然の外気の中の醸造は、約1パーセントほどしか生産されていません。きわめて貴重な文化遺産なのです。
 金両の丸大豆醤油は、自然の中で発酵させていますので、桶ごとに、住み着いている菌が違ったりします。そのため、「桶替え」と言ってある程度経つと違う桶に移したりして、品質をなるべく安定させるようにしています。大手メーカーが、この年数を桶で置き仕込むとなると、莫大な金額の資金と桶の場所が必要になります。木桶による天然醸造は、小さな醤油屋だからこそできる技なのです。

6 お客の顔を見ながらの商売に徹する
 伝統製法を守っている部分を裏側の環境だとすると、外側の環境である経営部分は大きく路線変更をしています。
 まずは個人売に力を入れること。最初に行ったのが、醤油蔵の前の駐車場の一角で、空箱とベニヤ板で台を作り、パラソルを立てて醤油の販売を行いました。今では、醤油蔵の横にあったもろみ蔵を直売所に改装し、そこで金両の商品を販売しています。また、百貨店での販売、電話やインターネットによる全国通販も行っています。
 金両の一番人気の「だし醤油」は4代目(寿美子社長の父)が開発しました。寿美子社長が入社した頃は、このだし醤油はまだ1回に21本しか作ることができませんでした。しかし、アナログスタイル販売で評判となり、だし醤油の製造に力を入れ、今では1回に2000本ほど作れるほどに拡大しました。
 ある日、直売所に若い女性のお客様が立ち寄ったことがありました。そのお客様は、店内をぐるっと回りしてひと言「お醤油なんて使わんしなぁ」と言って帰ってしまったそうです。その時、寿美子社長はとても悲しく思ったと言います。「金両がどうこうではなくて、日本食を否定された気分になったんですよ。醤油って、日本の伝統調味料じゃないですか。それがすごく悲しくて、その時に若い人にも手に取ってもらえるような商品を作ろうと思ったんです。」このことがきっかけとなり、様々な取り組みを始めたのです。
 家庭において、主に家事を司る人の多くは女性です。寿美子社長は、ラベルは女性が好みそうなデザインに、瓶はワインボトルにしてみたりと、女性目線の販促を始めました。そんな中で生まれたのが、思わずにっこりしてしまうようなパッケージの「パパママシリーズ」です。「食卓で家族の一員のように愛される醤油、食卓が楽しくなるようなパッケージにしたい」そんな思いで寿美子社長が考えた醤油差しです。
 パパ(丸大豆醤油)、ママ(こいくち醤油)、娘(だし醤油)の3種類があり、「私、醤油娘。魔法の醤油で、料理の腕をあげちゃうぞ〜★」「醤油ママです。料理を何でも、なつかしいおふくろの味にしちゃうわよ」「私が頑固な醤油パパです。代々伝わる伝統の味を、ずっと守り続けとる!!」など、ユニークなコピーと可愛らしいイラストで人気となっています。
 また、小さくてコロンとした瓶が可愛らしい「コロコロセット」も小豆島土産として女性に人気で、直売所だけでなく高松空港の売店でも販売され人気商品となっています。

 寿美子社長は、時代に合わせて大きく舵を切りました。しかし、製法、商売に対する姿勢はしっかりと伝統を受け継いでいます。寿美子社長の発想力、智幸氏の営業力で、金両醤油はこの先もまた新たな道を切り開いてゆくのでしょう。

7 ヴィンテージ・ワインのような醤油を作りたい
 取材中「10年物の限定醤油が出来ました」という話が、金両から飛び込んできました。
 ワイン等と違い、通常、醤油は「2012年度仕込み醤油」といった何年物は販売していません。金両も限られた杉桶の中で、空いた桶に見込み数量を仕込むため、一番古く仕込んだものから販売しています。ところがとんだ事件が起きたのです。
 10年も経ってしまい、本来なら廃棄処分にする醤油が発見されたのです。よっぽど捨てようと思ったそうですが、幸運にも香川県の食品研究所が近くにあり、分析に出したところ、驚くほど分析値もよく味も良いことが分かりました。
 このようなことは本当に稀なことであり、限定販売という形より安定供給を目指し、その時の需要によってもろみを搾る時期が少し早くなったり遅くなったりして、2年数か月であったり、3年数か月であったりするために起きた偶然です。
 偶然を生かすのが革新の真骨頂です。10年熟成醤油は酸化が進みすぎる問題がありますが、2年3年のヴィンテージ醤油は、醤油の世界に革新をもたらすかもしれません。大いに挑戦してほしいものです。酸化をどう食い止めるかが鍵をにぎっているでしょう。
 革新の兆しが、一人のお客の言葉に現れています。
 「以前、食の仕事で住んでいたフランスの地方の香りがします。ワイン工場や、バルサミコの醸造所と共通の香りがします」。
 醤油とバルサミコ酢は同じ香りと味わいをもっており、非常に相性が良い調味料です。ここからきっと新しい味が生まれるでしょう。

(本稿は金両株式会社への取材といただいた資料にもとづき編集・制作したものです)

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