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職人の技から生まれた 茅乃舎だしパック

商品の素顔

  商品名茅乃舎だし(代表商品)
  カテゴリー複合調味料
  製造者株式会社久原本家食品
  原材料風味原料[かつお節、煮干しエキスパウダー(いわし)、焼きあご、うるめいわし節、昆布]、でん粉分解物、酵母エキス、食塩、粉末醤油、発酵調味料、(原材料の一部に小麦、大豆を含む)
  内容量8g×30袋
  価格1,944円

1 地域の醤油蔵として創業
 茅乃舎だしを発売している久原本家グループの創業は、明治26年、今から120年前に遡ります。初代の河邉東介氏は、久原村発足のための政治活動などに私財を投じました。先祖伝来の田畑の多くを手放す東介を見かねた村民たちが、恩返しの気持ちから募金を行って支援したと伝わっています。そこで集まった資金を元手に、稼業となる醤油醸造業を始めました。

2 スローフード運動との出会い
 四代目の河邉哲司氏の時代には本業のたれづくりで成長し、食品会社として順調に進んでいました。そんな中、河邉氏は何かが足りないという思いにとらわれていました。
 『美味しさを追求するだけでなく、本当に人を幸せにする食とはどんなものだろうか』。
 悩んでいた頃、イタリアにて食を学ぶ機会があり、全世界に広まりつつある「スローフード運動」のことを知ったのです。
 「スローフード運動」は三つの柱に支えられています。「姿を消しつつある郷土の料理を守る」「質のよい食材を提供してくれる小規模な生産者を応援する」「食べ物を科学し、消費者や子供たちに味覚の教育をする」です。ぼんやりと頭に描いていた食の未来像がはっきりと見えてきたように感じ、早速日本に帰り、地元でスローフードに協力してくれそうな人々を探し始めました。すると、驚くほどたくさんの情報が舞い込んできました。
 有機農法に取り組む地元の農家、消えつつある赤米を伝えようとする米農家、地域の伝統食を残そうとするおばあちゃん…。彼らは皆地元を愛し、高い志で農や食に取り組み、しかもその知見を惜しみなく教えてくれました。『福岡や九州は、これほど豊かな土地だったのか。』河邉氏は目が覚めるような思いがしたそうです。
 彼らとの出会いは、ものづくりの姿勢を見直すきっかけになりました。久原本家グループはそれまで、調味料や食品を全国のたくさんの消費者に販売していました。しかし、スローフード運動と出会い、自分の足もとをもっと大事にしようと思うようになりました。自ら種を蒔いて農業をし、そこで収穫した野菜をお店で調理して出すことで、伝統の食文化を次世代に伝えていきたいという気持ちが強くなってきたのです。
 社内にスローフーズ課(現在の農業生産法人・美田)を立ち上げ、久山町に2反ほどの畑を借り、野菜づくりに取り組み始めました。現在、堆肥を漉き込んでの土づくりからビニールハウスを建てるまで、農家の方に教わりながら手探りで進めています。

3 次世代に伝統を伝える場所〜茅乃舎レストラン
 育てた野菜を味わっていただく場所として、「レストラン」の構想も進めていました。
 『単なる食事をする場所では意味がない』
 そう考えたときに、「伝統文化を残す場所」として茅葺屋根の構想が浮かんできました。
 飲食店としては珍しい茅葺屋根。河邉氏が、かつて茅葺屋根の葺き替えに立ち会った際の感動が、構想の背景にあったそうです。河邉氏の母の実家は北九州にある古い造り酒屋でした。その屋根が茅葺屋根だったそうです。屋根の葺き替えの現場に立ち会った河邉氏は、茅葺き職人の手で生まれ変わっていく茅葺屋根を見て思いました。
 『この美しさを次世代に残さなくてはならない、それが自分の使命だ。他のどこにもない、百年も二百年も残る店にしよう。』

(茅葺屋根を葺く)
 レストラン「茅乃舎」の場所には、久山町の猪野が選ばれました。久山町は、茅乃舎の母体である久原本家が明治26年から拠点にしてきた土地で、中でも山間に位置する猪野は蛍の名所として知られており、小川にはきれいな水にしか育たないクレソンが自生し、初夏になると蛍が乱舞します。
 自然に恵まれたこの土地には、茅葺屋根がふさわしいと考えました。大分県出身の茅葺き職人に加え、2人の職人が参加しました。「茅乃舎」の屋根は300坪、つまり1反もありました。「今までのすべての経験と、職人の魂をかけてやりました」と職人が語るほど、力を入れて作られた屋根です。高い屋根上まで茅の束をかつぎあげ、少しずつ茅が置かれていく様に、関係者の皆が圧倒されました。計画してから1年半、見事な茅葺屋根が全貌を現しました。
 『すばらしい屋根は完成したものの、果たしてこんな辺鄙な場所までお客様が来てくれるのだろうか…?』
 しかし、オープンの当日店は予約で満席になりました。茅葺のことを聞きつけた多くの人が、実際に見て感嘆の声を上げたそうです。

(自然食レストラン「茅乃舎」のスタート)
 レストランの厨房では、まず美味しい素材を九州中で探すところから始めました。生産者と直接取引するために、1ヶ月間軽トラックで九州の田舎を訪ねて回ったスタッフもいるそうです。こうして足で集めた食材をずらりと並べて、メニュー作りが始まりました。
 土鍋炊きごはんに使う米は、最も美味しい状態で出すために地元から籾の状態のままで仕入れ、その日の朝に使用する分だけ籾すりと精米をおこないます。調味料もできる限り自分たちで作ったものを使いました。素材の下準備はすべて料理人の手で行なうため、客席の50席に対し、料理人は8人という大所帯です。和食の料理人、洋食シェフ、出身は様々。ジャンルにはとらわれず、食材の良さを活かした料理というのが特徴です。野菜を天日干しにしたものからスープを作ったり、穀物をだしにしたり…。素材の美味しさを引出せるなら、手段は何でもいいと考えたからです。こうした細やかな試みは、大手企業ではなかなかできません。

4  だしの美味しさで勝負する
(素朴な自然を美味しく食べる「十穀鍋」)

 それほどに手間をかけても、豪華な料理を期待してきた客からは「質素過ぎる」「野菜ばかりでがっかり」と苦情が出ることもありました。開店当時の2005年頃は、今のように自然食がもてはやされていない時代でした。
 『理想が高くても、喜んでいただけなくては意味がない』
 悩んだ末に生まれた料理が、「十穀鍋」です。かつお節のだしに、十穀米それぞれが持つうまみ、さらに豚肉、ゴボウ等の野菜のうまみがとけこむような鍋にしました。どの客も“美味しい、美味しい”と最後まで食べてくれました。
 素材の豪華さではなく、素材の持ち味をいかに引き出すかで勝負したのが「十穀鍋」です。体にすっと入ってくるような、食べてしみじみと安心するような料理の鍵は、やはり“だし”と“うまみ”です。
 「十穀鍋」が人気になってから、客からの「だしのコツを知りたい」という要望が多く寄せられました。
 『これだけお客様に十穀鍋を喜んでもらえる。という事は…、家庭でだしをゆっくり味わう機会が少なくなっているのではないか?』
 この気づきが、新たな開発に繋がっていきます。

(料理人の味を家庭でだせる茅乃舎だしの誕生)
 家庭で、様々なだしの素材を揃えたり、それぞれきめ細やかな方法でだしを取るのは、プロの料理人でも難しいことです。そこで、粉末にしただしを組み合わせて、ティーバッグに入れるという「家庭用だし」の構想が生まれました。
 開発には、だしの素材にこだわりました。九州博多のだしと言えば「焼きあご」です。博多雑煮などに使われる焼きあごは縁起のいい食材として珍重され、「あごが落ちるほど美味しい」からその名がついたとの説もあるほどです。この「焼きあご」を「家庭用だし」の柱にしました。他にも、長崎や鹿児島の枕崎の鰹、熊本のうるめいわし、北海道の尾札部の昆布など、各所をまわり自分たちの目で素材を確かめて味を決めていきました。
 もちろん本来は、素材そのものからだしを取る方が美味しいのは間違いありません。しかしながら、家庭料理でそれをするのは難しいのも事実です。本物の素材を使いながらも、家庭で使いやすいようにティーバッグに入れ「茅乃舎だし」として商品化し、全国に発売しました。
 「茅乃舎だし」は、職人が渾身を込めて作っただしパックです。塩や醤油などで既に調味されており、素材としてのだしというより、そのままでも「十分に完成されたすっきりとした味のだし」という感じがします。だしとして完成されていますが、好みにより味付けを変えられ、使い勝手が良い調味料になっています。

(お客様の声で広がるだし)
 以下、「茅乃舎だし」に寄せられた消費者の声をいくつか挙げてみました。
 「6歳の孫に、「茅乃舎だし」を使って野菜うどんやお味噌汁を作ると、「ばあばのおつゆはおいしい!!」と、野菜ごとぺろりと食べてくれます。そして、食卓はとてもあたたかくなります。私にとって「茅乃舎だし」は、孫たちの笑顔をもらえる“優しい笑顔のおだし”です。」
 「今年から茅乃舎だしを知り、毎日の料理が楽しくて楽しくて仕方ありません。今まで、自分で利尻昆布や極上の鰹節などでだしを取っていましたが、どうしてもコクが出ず。でも、家庭料理で味を極めるのは難しいと諦めていた75歳の私が、茅乃舎だしに出合い、料理の楽しさに目覚めました。お友達にも差し上げ、喜ばれています。」
 久原本家グループの幹部が消費者の声に対して、次のように言っています。
 「だしは、ご家庭で使っていただいて初めてゴールだと考えています。1000人の方がいれば、1000通りのお料理や使い方があります。お料理や食事を家族とともに楽しんでいただくのをお手伝いすることが、私たちの使命だと考えています。」

5 だしのうまみを日本から世界へ広める
 久原本家グループは、だしを日本の食文化の旗手にしたいと考えています。
 「醤油とともに、だしは世界に誇れる知恵だと考えています。私たちは、今後は世界にも、だしの良さを広めていくつもりです。四季折々の食材とのかかわり、家族や地域との歳時記と密接な結びつきを通じて、日本の食文化は私たちの暮しを豊かにしてきました。旬の食材を生かし、自然と健康的な食事を取れることも大きな特徴のひとつです。これらの文化や健康的な側面を商品と一緒に伝えていきたい。さらに、だしを使って作るのが和食だけである必要はありません。各国、各地域のもっているそれぞれの食文化と「だし」が結びつくことによって、より面白い、豊かな食文化が広がって行く可能性があります。商品の裏に広がる豊かな食の世界とともに、「茅乃舎だし」を世界に発信していきたいと思います。」

(本稿は株式会社久原本家食品への取材といただいた資料にもとづき編集・制作したものです)

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